
バジルの代用について知りたい方に向けて、身近な食材で風味や彩りを上手に置き換えるコツを解説します。
バジルは爽やかな香りと鮮やかな緑色が魅力的ですが、日常的に常備している家庭は少なく、急に必要になった際に手元になくて困ることも少なくありません。
そこで、大葉やオレガノ、ローズマリー、ミント、ほうれん草など、手に入りやすい食材を使い分けることで、料理の印象を損なわずに代用する方法を紹介します。
さらに、ピザやマルゲリータ、ジェノベーゼ、ガパオといった人気料理における実践的な活用アイデアを具体的に取り上げ、代用でも本格的な味わいを楽しめるポイントを丁寧に解説します。
また、ローリエのように一見似た用途に見えて実際には代用に不向きな食材についても注意点を解説し、失敗を避けるための判断基準も示します。
日常の料理で無理なく取り入れられるテクニックを知ることで、バジルがなくても迷わず調理を進められるようになるはずです。
ポイント
- 用途別に最適な代用ハーブと野菜の見極め方
- ピザやマルゲリータでの具体的な置き換え手順
- ジェノベーゼやガパオを代用素材でおいしく作るコツ
- 保存と下ごしらえで風味を最大化するポイント
バジルの代用の選び方と基本
- 大葉で香りを補う代用のコツ
- オレガノで風味を近づける
- ローズマリーは肉料理に好相性
- ミントはデザートの置き換えに
- ローリエは代用に不向きな理由
大葉で香りを補う代用のコツ

大葉はシソ科に属する植物で、清涼感のある独特な香りと鮮やかな緑色が特徴です。
和食では刺身のつまや天ぷら、冷ややっこの薬味として親しまれていますが、洋風料理にも応用しやすく、バジルの代用として活用できます。
特に、和風パスタやカプレーゼのように生で添える料理では、彩りと香りを一度に補える優れた選択肢です。
バジルと比較すると、香りの立ち上がりがやや鋭いため、置き換える際は分量に注意が必要です。
目安として、バジル2枚分に対して大葉1枚程度から試すとバランスを崩しにくいとされています。
細切りにして仕上げに散らすと香りが立ちやすく、加熱する場合は火を止める直前に加えることで色の退色を防げます。
また、オリーブオイルとの相性が良いため、刻んだ大葉とオイルを和えてから加えると風味が均一に広がります。
ペーストとして使う際は、松の実やアーモンドなどのナッツ、パルメザンチーズを組み合わせるとコクが補え、味に深みが出ます。
ただし、大葉はバジルよりも香りが前面に出やすいため、にんにくやアンチョビなど強い香りの食材を合わせるときは控えめにすることがポイントです。
全体の香りが大葉一色にならないよう、素材同士の香りのバランスを意識することが仕上がりの良し悪しを左右します。
主な代用品の比較早見表
| 代用品 | 香りの強さ | 生食向き | 加熱向き | 相性の良い料理 | 使い始めの目安量 |
|---|---|---|---|---|---|
| 大葉 | 中〜強 | とても良い | 良い | 和風パスタ、冷菜 | バジルの半量程度 |
| オレガノ(乾燥) | 中 | 可 | とても良い | トマトソース、ピザ | ごく少量から |
| ローズマリー | 強 | 不向き | とても良い | 肉・芋のロースト | ひと枝または少量 |
| ミント | 中 | 良い | 可 | デザート、ドリンク | バジルの1/3程度 |
| ほうれん草 | 弱 | 良い | 良い | ペーストのかさ増し | バジルの1.5倍量 |
大葉は価格が安定しており、国内産地も多いため、季節を問わず手に入りやすい点も利点です。
保存する際は、湿らせたキッチンペーパーで茎を包み、密閉容器に入れて冷蔵庫の野菜室に立てて保管すると鮮度を保てます。
冷凍する場合は細かく刻んでから小分けにすると解凍後の香りも損なわれにくく、使い勝手が向上します。
オレガノで風味を近づける

オレガノは地中海沿岸原産の多年草で、加熱によって香り成分が強く立ち上がる性質を持っています。
特にトマトやチーズと組み合わせた際に相性が良く、ピザソースやラグーソースなどの煮込み料理でその真価を発揮します。
乾燥オレガノは水分が抜けて香気成分が凝縮されているため、生の状態よりも香りが強く、少量でも十分な存在感があります。
使用する際は、つまようじの先に乗る程度のひとつまみから始めると、風味が強くなりすぎず調整がしやすくなります。
煮込みや焼き料理では、加熱過程で香りが食材全体に行き渡るよう、早めに加えるのが効果的です。
一方、生のオレガノを使う場合は香りが繊細なため、仕上げ直前に細かく刻んで加えることで青臭さが出すぎず、爽やかなアクセントとして活きます。
バジルと比較するとオレガノの香りはよりスパイシーでドライな印象がありますが、ハーブらしい清涼感という点では近い方向性を持っています。
そのため、料理全体にバジルのようなハーブ感をまとわせたい場合には、代用として非常に有効です。
ただし、ペースト状にする場合は個性が強く出すぎる傾向があるため、大葉やパセリなど香りの穏やかな葉とブレンドし、味の骨格を複層的に構成することが望ましいとされています。
オレガノには抗酸化作用をもつポリフェノールやロスマリン酸などの成分が含まれていると報告されており(出典:国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門)、健康志向の観点からも注目されているハーブです。
保存する際は乾燥タイプを遮光性の高い容器に入れて冷暗所で管理し、香りが劣化しないうちに3〜6か月程度で使い切るのがおすすめです。
このように、オレガノは少量でしっかりと香りを補えるため、バジルが手に入らない際に頼れる代用候補となります。
ローズマリーは肉料理に好相性

ローズマリーは常緑低木に分類されるハーブで、精油成分にロスマリン酸やシネオールなどを多く含み、これらが独特の強い芳香を生み出しています。
この香りは油脂を含む素材と非常に相性が良く、特に肉や芋、パン生地などと組み合わせると風味が一層引き立ちます。
一方で、バジルのような爽やかな清涼感や柔らかい葉の質感とは異なるため、ジェノベーゼソースや生のサラダの仕上げとしての置き換えにはあまり向いていません。
鶏肉や豚肉、ラム肉のローストでは、ローズマリーの香りが臭みを抑えつつ深い風味を付与してくれます。
使用する際は、生の枝を軽く潰してからオリーブオイルに浸してマリネ液として使い、加熱後に取り除くとえぐみが出にくくなります。
乾燥ローズマリーを使う場合は、生葉より香りが凝縮されているため、少量から加えて味を確認しながら調整するのがおすすめです。
また、ソースやドレッシングに香りを移したいときは、オリーブオイルで弱火にかけてから取り出し、ローズマリーオイルとして仕上げに回しかけると全体の香気が一気に高まります。
香りが非常に強いため、素材本来の甘みや旨みを損なわないよう、初めは少量から加えることが大切です。
ローズマリーに含まれるロスマリン酸には抗酸化作用があるとされ、油脂の酸化防止にも役立つ可能性が報告されています。
風味付けと同時に保存性向上にも一役買う点は、料理に取り入れるうえでの大きな利点です。
ミントはデザートの置き換えに

ミントはメントールという成分を豊富に含み、ひと口で爽やかな清涼感が広がるのが特徴です。
バジルの代わりとして使う場合は、その清涼感を生かしやすいデザートやドリンク、フルーツサラダといった冷製料理が適しています。
バジルと同じ量を使うと清涼感が強くなりすぎるため、目安としてバジルの1/3程度から少しずつ加えるとバランスを崩しにくくなります。
相性の良い食材としては、レモンやオレンジなどの柑橘類、ヨーグルトやリコッタチーズといった乳製品があります。
アイスクリームやシャーベットのトッピング、冷製スープの香り付けなど、食後の口直しや暑い季節のメニューに取り入れると爽やかさが際立ちます。
一方で、トマトやモッツァレラなどの乳製品と組み合わせる塩味の料理でも、オリーブオイルやビネガーを介してまとめると違和感が減り、バジルのようなアクセントとして機能します。
加熱調理では香り成分のメントールが揮発しやすく、長時間の加熱では風味が飛んでしまうため、火を止めてから加えるか、盛り付け直前に生でのせるのが理想的です。
また、生葉を使う場合は水気をよく拭き取り、刻まずにちぎって加えることで苦味の発生を抑え、見た目も美しく仕上がります。
バジル不在でも清涼感と華やかさを演出できるため、香りを主役にしたい料理で特に活躍します。
ローリエは代用に不向きな理由

ローリエ(月桂樹の葉)は乾燥葉として流通しており、主に煮込みやスープなど長時間加熱する料理で、穏やかな香りをベースに移す目的で用いられます。
バジルのように生葉をそのまま食べる用途や彩りを演出する用途には適しておらず、代用として考えるには性質が大きく異なります。
香りの系統もバジルとは異なり、フレッシュな清涼感ではなく、落ち着いた樹木系の香りを持つため、サラダやピザの仕上げに使うと違和感が強く出てしまいます。
見た目のアクセントとしても機能しにくく、仕上げに香りを立たせる用途では他の食材の風味を覆い隠してしまうことがあります。
どうしても臭み消し目的でバジルの代わりに使う場合は、煮込みの最初に1枚だけ加え、調理が終わったら必ず取り除くようにしてください。
長時間加熱することでローリエに含まれるシネオールやオイゲノールなどの香気成分が徐々に抽出されますが、入れっぱなしにすると渋みや苦味が出る恐れがあります。
つまり、バジルの役割が「彩りや仕上げの香り付け」であるのか、「加熱調理で香りを下支えする」のかを見極めることが大切です。
ローリエは後者の用途に限って使用し、前者を求める場面では他のフレッシュハーブ(大葉やミントなど)を検討するほうが、料理全体の完成度を損なわずに済みます。
バジルの代用として安易に置き換えるのではなく、役割の違いを理解したうえで使い分けることが、失敗を避けるうえで不可欠です。
料理別に見るバジルの代用活用術
- ピザで試す手軽な置き換え
- マルゲリータの代替トッピング
- ジェノベーゼを代用素材で作る
- ガパオは香味野菜でアレンジ
- ほうれん草で色と香りを補完
ピザで試す手軽な置き換え

ピザでバジルを代用する際は、香りが高温で揮発しやすいという性質を踏まえて、調理工程を二段階に分けるのが効果的です。
まず焼成前には、乾燥オレガノをソースにごく少量混ぜ込みます。
乾燥オレガノはバジルよりも耐熱性が高く、加熱後も芳香が残るため、土台部分にしっかりと風味を持たせることができます。
一般的な直径20cmのピザ1枚に対して、耳かき1杯程度(約0.2g)を目安に加えると、香りが強くなりすぎずバランスがとりやすいとされています。
次に焼き上がり直後、まだ表面が熱を持っているうちに大葉の細切りやミントの葉を少量散らします。
生葉は加熱すると香りが飛びやすいため、火を通さずに仕上げとして使うことでフレッシュ感を際立たせることができます。
この段階でエクストラバージンオリーブオイルを薄く回しかけると、油分が香り成分を閉じ込めて全体に行き渡らせる役割を果たします。
さらに、チーズの塩味が強いピザでは、代用ハーブの風味が埋もれてしまうことがあります。
その場合はハーブの量をやや控えめにしつつ、焼き上がりに黒こしょうをひと振りしたり、レモンの皮をごく薄く削って散らすと、全体の風味が引き締まり調和がとれます。
ピザは熱や油分の影響で香りのコントロールが難しい料理ですが、このようにタイミングと組み合わせを工夫することで、バジルがなくても満足度の高い仕上がりに近づけることができます。
(出典:農林水産省「香辛料の魅力再発見」)
マルゲリータの代替トッピング

マルゲリータはトマト、モッツァレラ、バジルという三要素の調和によって成立しているため、バジルを代用する場合は香りと彩りの両立を意識する必要があります。
特に赤・白・緑のコントラストは視覚的にも味覚的にも印象を左右するため、緑の要素を欠かさず補うことが大切です。
焼き上がった直後に、大葉の千切りを中央から放射状に散らすと、鮮やかな緑と清涼感のある香りを同時に演出できます。
大葉は熱に弱いため、火からおろしてすぐにトッピングすることで、色と香りを損なわずに活かすことができます。
また、土台となるトマトソースには、焼成前に微量(約0.1〜0.2g)の乾燥オレガノを混ぜると、香りの骨格が整い、イタリアンらしい風味が引き立ちます。
よりハーブ感を強めたい場合でも、ローズマリーは香りが鋭く突出してしまうため適していません。
ミントをほんの数枚だけ細かく刻んで大葉と混ぜ込むと、清涼感が補強されつつも全体の調和を崩さずに仕上げられます。
ミントは加熱で香りが飛びやすいため、生のまま焼き上がり後に加えるのが望ましいです。
このように、焼成前のソースには耐熱性の高いスパイスを仕込み、仕上げには生の葉で彩りと清涼感を補うという二層構造を意識することで、バジル不使用でもマルゲリータらしい印象を十分に再現することができます。
ジェノベーゼを代用素材で作る

ジェノベーゼソースは、バジルの爽やかな香りと緑の彩りが特徴ですが、代用素材でも十分に本格的な風味を再現できます。
大葉やパセリ、少量のオレガノをブレンドすることで、香りに層を持たせつつ、バジル不在でも物足りなさを感じにくい仕上がりになります。
特に大葉は同じシソ科で香りの方向性が近く、パセリは青さと彩りを補完する役割を果たします。
ナッツは、松の実が手に入らない場合でも代用が可能です。
アーモンドは軽い香ばしさ、くるみはコクと油分、ピーナッツは甘みを加えることができ、どれも十分な油脂分を含んでいるため滑らかなペーストに仕上がります。
オリーブオイルはエクストラバージンを使用し、粉チーズ(パルミジャーノ・レッジャーノなど)とにんにくを加えることで、香りと旨味のバランスが整います。
調理時には、塩で味を調えた後、茹でたパスタのゆで汁を少量ずつ加えて乳化させると、油と水分がなじんで口当たりが一層滑らかになります。
色を鮮やかに保つためには、葉を洗った後に水分をしっかり拭き取り、短時間で高速撹拌することが大切です。
さらに、仕上げにレモン果汁を数滴加えると酸化を抑えて退色を防ぐ効果があります。
また、ほうれん草を加えるとペースト量を増やしつつ味がマイルドになり、子どもや辛味が苦手な方でも食べやすい風味に仕上がります。
香りが弱めのほうれん草は、主役の香りを邪魔せずに全体をまとめるサポート役として適しています。
ガパオは香味野菜でアレンジ

ガパオは本来、ホーリーバジルの独特なスパイシーな香りが主役ですが、手に入りにくい場合は他の香味野菜を組み合わせることで満足度の高い一皿に仕上げられます。
にらやほうれん草、ピーマンなどは香りや食感のバランスが良く、油と合わせると甘みや旨味が引き立ちます。
これらを使うことで、ホーリーバジルが持つ清涼感と香ばしさを多層的に再現できます。
調味のベースには魚醤とオイスターソースを使用し、砂糖を少量加えるとコクと照りが出ます。
唐辛子は辛さの好みに応じて調整し、香味を生かすために仕上げ直前に野菜類を加え、加熱しすぎて香りが飛ばないようにすることが大切です。
火を止める直前に加えることで、青さと清涼感が残り、味の輪郭がはっきりします。
仕上げに大葉の千切りを少量散らすと、爽やかな香りが加わり、全体の風味が引き締まります。
バジル特有の香りを完全に再現することはできませんが、香味のレイヤーを複数重ねることで、バジル不在でも奥行きのある香りと満足感を演出することが可能です。
見た目にも緑の彩りが加わり、料理全体が華やかに仕上がります。
ほうれん草で色と香りを補完

ほうれん草はバジルや大葉に比べて香りが穏やかでクセが少ないため、色の補完やペーストのかさ増しに非常に適しています。
単独では香りが弱いため、大葉やオレガノなど香りの強い素材と組み合わせると、バジル不在でも満足度の高い仕上がりが得られます。
ペーストにする場合は、下茹でした後に冷水でしっかり冷やし、キッチンペーパーで水分を丁寧に絞り取ってから撹拌すると、なめらかな舌触りになりやすいです。
炒め物に使う際は、油との相性が良く、にんにくや魚醤と一緒に炒めると香りが立ちやすくなります。
また、茹でたほうれん草を刻んでピザのソース下地に散らし、その上に大葉やミントなどの生葉をトッピングとして焼成後にのせると、焼き色と緑のコントラストが美しく映えます。
このように、焼成前と焼成後で役割を分ける二段構成にすることで、見た目と香りの両立が図れます。
ほうれん草はβカロテンや鉄分、葉酸などの栄養素も豊富で、緑黄色野菜の中でも栄養価が高いとされています(出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」)
栄養面でも取り入れる価値が高く、香りの主役を他のハーブに任せつつ、色・舌触り・栄養の三要素を支える役割として非常に有用です。
香りのバランスを崩さず、彩りとボリュームを同時に補いたい場面で重宝する素材といえます。
バジルの代用の選択と保存の要点
最後にまとめます。
チェックリスト
- 目的が香りの仕上げか下ごしらえかを区別する
- 大葉は仕上げに使いバジルの半量から試す
- オレガノはソースに微量を混ぜ加熱で香りを出す
- ローズマリーは肉と芋で少量を油になじませる
- ミントはデザートや冷菜でバジルの三分の一から
- ローリエは煮込み専用で仕上げ代用には不向き
- ピザは焼成前のオレガノと焼後の生葉の二段構え
- マルゲリータは大葉と微量オレガノで骨格を補う
- ジェノベーゼは大葉とほうれん草で色と量を保つ
- ガパオは香味野菜を重ねて香りの層を設計する
- 香りの強い代用は必ず少量から加えて調整する
- 生葉は水気を拭いて密封し冷蔵で短期に使い切る
- 乾燥ハーブは遮光と密封で香りの劣化を抑える
- ペーストは小分け冷凍で必要量だけ解凍して使う
- 代用は香りの方向性と彩りの両立を意識して選ぶ